たまに記録

備忘録です。興味のわいたことについて調べた内容を記録していきます。

君には届かない。(日本/2023年)

エピソード同士の絶妙な配置と‘’かけた‘’配役の成功

 

◆概要◆
[制作] TBSスパークル製作委員会方式
     ドラマストリーム
[監督] 泉 正英  棚澤 孝義  林  雅貴
[PD] 阿部 愛沙美
[脚本] 開 真理
[原作] みか
[出演] ヤマト (大原 倭斗)・・・前田 拳太郎
     カケル (芦屋 架) ・・・柏木 悠 (超特急)
     藤野 孝介      ・・・田中 偉登
     保坂 唯       ・・・松本 怜生
     天宮 颯一郎     ・・・百瀬 拓実
     遠山 茜       ・・・中井 友望
     横内 柚弦      ・・・福嶌 崇人 (Hi-Fi Un!corn)
     ミコト (大原 実琴)・・・紺野 彩夏
     村セン          ・・・ 板倉 俊之(インパルス)

 

原作を愛読している私は、どのようなドラマになるのだろうとわくわく感を胸に放送を待っていた。
若手俳優の登竜門的な存在となっている日本のBLドラマではあるけれど、原作が存在するとき、原作の良さが見えない、また、演出をはじめとして、作品全体が残念な結果になっていることも少なからずあって*1、怖さも少し同居していた。

 

結果、現在、無限視聴ループに陥っている。

 

まず、この短い話数の上、約20分という短尺の中で、こんなにもうまくまとめてくださったかという感動。
原作の先生が監修されたとのことなので、納得ではあるのだけれど、原作から、必要なエピソードをうまく抽出して、各エピソードの主要なエッセンスをそれぞれの場面の演出や、セリフにしっかり表現する。
しかも、違和感なくまとめられていたので、驚きだった。
むしろ、間延び感を感じさせることがない分、より効果的であったかもしれない。(漫画であれば必要なシーンでも、映像にFASTな部分も求められる昨今であれば。)

また、ヤマトとカケルの子供のときのエピソードには、ヤマトがカケルを好きになる大事なきっかけがたくさん描かれていたから、ドラマにはいくつかの軽いエピソードしか採用できなかったのは、本当はとても勿体ない。(ヤマトの強火激重感情のルーツでもあるから。)
けれど、この尺のドラマでは割愛せざるを得なかっただろうし、もし挿入させていれば間延び感と不足感が同居することは避けられなかったであろうと思うから、エピソードの流れや感情の動きに齟齬が出ないよう構成されていたことに「勇気ある割愛だ」と感じた。

私が息を飲んだシーンに、ヤマトが橋の上で涙を流すシーンがある。

カケルが自分の自信のなさをヤマトにぶつけ、それを聞いたヤマトがカケルへの思いを吐露し、思わずカケルを押し倒す。そして我に返ったヤマトがその場から駆け出し、橋の上で涙を流す第6話のシーンだ。
自身の思いを伝えたい、分からせたい、その強い思いの奔流から行動を起こすものの、我に返り、とっさにその場から離れる。その後、橋の上で欲をはらんだ切な過ぎる恋情を大粒の涙とともに爆発させる。ヤマトがもつカケルへの強い恋情の発露の流れが私の感情を持っていってしまった。思わず一緒に泣いた。

このシーン、原作では駆け出すのはカケルだけれど、ドラマではヤマトが我に返って駆け出すのだ。私は、ドラマ版のこの構成に胸を掴まれてしまった。*2

制限が創造性を高める、とはよく言うが、このドラマはまさに、話数の短さといった制限をうまく工夫に変えられていると感じる。いくつかのエピソードを前後させながら、大胆にエピソードを割愛しつつも、重要な要素はミックスし、原作ファンにも違和感がないようにストーリーを構成させている。
私は、ドラマではヤマトは‘’痛みと切なさ‘’、カケルは‘’とまどいとひたむきさ‘’にフォーカスし、二人の関係性を描いていたように思う。よって、その焦点に合わないエピソードをうまく省いていったのではないか。結果、原作に比べて、ヤマトはより繊細に映り、カケルの子供っぽさは薄まっていた。

そして、ヤマトの痛いほどの切なさに焦点を当てるなら、このシーンで駆け出すのはヤマトでなければならない。
激しい恋情の発露は、切なさの最大の見せ場となる。
しびれる構成だ。

クリスマスデートで、カケルが告白した後のヤマトのセリフ「やっとつかまえた」
これも原作にはないものだが、この言葉のチョイスがにくい。
カケルへの、ヤマトの強すぎる愛と執着が垣間見え、むしろそこに狂気すら見えかねないこのセリフは、最終話に効いている。

長くなってきたのでいつかに続く
配役について文章化できていない。

 

*1:あくまで主観

*2:漫画ももちろんいい!原作あってこその改変だから。